司馬遼太郎

印象に残った司馬作品

私は還暦を過ぎた頃、一人暮らしの父が老人施設に入ってしまって、実家は誰も居なくなり留守番代わりに、私が実家の母屋(明治維新の頃建てたという)を事務所として使用していた。仕事の合間に、兄たちが自宅に置けなく持ち込んだ書籍類などが沢山あったので、そんな物を整理していたら「花神」という本が目に入り、読み始めたら止まらなくなった。大村益次郎が主人公、それが司馬遼太郎を読む切っ掛けとなった。司馬遼太郎の本はこれしか無かったので、それからは、家から近い浜松市天竜図書館にある司馬遼太郎の本を次から次へ借りに行く日が続いた。

読んでいった順序は忘れたが、 竜馬がゆく  関ケ原    功名が辻  空海の風景  太閤記 国盗り物語  翔ぶが如く  菜の花の沖  項羽と劉邦  新撰組血風録  坂の上の雲  燃えよ剣  等々 まだ他にもあったと思うが、図書館にある全ての司馬作品を読破していった。中には再読したものも幾つかあった。司馬作品を歴史書として読むのは正しくないとは思うが、司馬遼太郎の筆を執る前の資料集めは半端ではなかった、という。○○を書く時には神田の古本屋街から○○に関する本がごっそり消えた、という逸話を読んだことがある。まあ、私としては、動かせない歴史上の事実を基にした歴史小説であると位置付けているが、私の歴史観を変えた作家でもある。もっともっと若いころにこういう本に出合っていたら・・・ノンポリで生きて来た人生ではなく、もっと違った人生を歩んでいたかも知れない、そんなインパクトのある作品群であった様な気がするし、どんなことであれ、それぞれの歴史を学ぶ・知ることの大事さを私は教えられた。例えば、話の大筋とは別に大村が豆腐を好んで食べた、とあるが、事実そういった資料はあったかも知れないが、多分司馬遼太郎は長州地方の食文化の歴史なども調べた上で、大村益次郎の人物像を表すに良しとして、豆腐を選んだのかも知れない。

登場人物と云えば 空海 斎藤道三 秀吉  黒田官兵衛 高田屋嘉兵衛 大村益次郎 竜馬 吉田松陰 土方歳三 勝海舟 等々これら人物はその時代時代の秀才であった様に描かれているが、事実そうであったように思われる。空海は天才だったが、他は地頭の良い一般人的秀才だったと私には思われる。殊に高田屋嘉兵衛は、ロシアに軟禁されている間にロシア語をマスターし、後に日ロ会談の通訳するほどまでになっていた、という。先日高校のクラス会、といっても10人程のリモートによる同窓会があり、東京に居るK君が 峠 という映画を見た、というので 河井継之助 をすぐに思い出した。司馬遼太郎の原作だ。継之助は確か岡山の山の中に住む偉い先生(山田方谷)に教えを請いに出かけた、とあったが、早期に大砲などの武器を買い込み、長岡藩の防衛戦略を画策した中心人物で、官軍が最もテコヅッタ藩として知られている。映画は 面白かった とK君は話していた。